近々の実話を再現するドラマがハリウッドでは容赦無く作られ続けていて、今作もそういう作品だったので現実とフィクションの距離感、史実と物語性のバランスなどを考えさせられたりした。
映画だけ見ているとドレーは音楽愛で生きている純粋な男=感情移入出来る主人公になっているが、例えばシュグというドレーの知人が若者をボコボコにしている現場でドレーは別に助けも止めもしていないのに映像的には「何てことをしているんだ」という目で見つめさせる。行為だけで見ると別に共感出来る部分ではないのにシーンとしてはドレー良いやつ的な印象を抱かせて実際の行為と劇映画の効果を上手いこと使い分けている。全篇がそのようにN.W.A.とその関係者に気持ちを寄り添っていかせる作りになっていて、登場人物の殆どが存命中という状況を劇映画で描くことの怖さはあるよな〜とは感じた。これがノンフィクションのドキュメンタリーだとしても作り手の作為が介在した虚構にならざるを得ないが、それでも再現ドラマだと物語がより固定化するというのもあって、これってどうなんだろうとは思わされた。
しかしそういった部分はこの手の映画全般にある話で、今作ではライブの再現や音楽自体を登場人物とともに味わって盛り上がるという音楽映画の肝が丁寧に作ってあるので、ギャングスタラップ怖いぜというイメージぐらいだったのが鑑賞後に即1stアルバムをポチってしまうぐらいにN.W.A.の魅力が伝わってくる作品になっていて、さらに青春映画としても楽しかった。それでもやっぱりN.W.A.怖いやん、という結論には達したけど。