『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で上がり過ぎたテンションを心地良くクールダウン、しかしあちらは徹底してバイオレンスアクションを、こちらは4人の女優をひたすら見せてくれるという違いはあるものの、こちらが見たい映像を二時間超見せてくれるという意味では『海街diary』も『怒りのデス・ロード』も共通するものがあった。余計なものは無しという潔さ。美しい四季の移ろいとともにみんな違ってみんな良いという四姉妹の美しさ可愛さが満載で、それだけで他は何もいらない素晴らしさだった。
綾瀬はるかは昭和の女優のような凜とした美しさを引き出されていて良かったし長澤まさみも夏帆もそれぞれに良い。そして広瀬すずが満開の桜の中で自転車二人乗りとかあざといにも程かあるのに泣けてしまう。他にも広瀬すずにペティキュアを塗る長澤まさみとか、是枝監督の真面目な変態性が決まりまくっていた。
今作、子供達の受難と、しなやかな強さが核として存在し、映画全体を覆う優しい眼差しも変わらず心地良いというのはこれまでの是枝作品と同様だが、表面的には社会派的な部分がかなり減少し、ドキュメンタリータッチの演出も控え目で、より普遍的な劇映画の様相が強まっていた。音楽もまさに劇映画という風情で、エンドロールで菅野よう子の仕事と分かったのだが、何でも長澤まさみの推薦で決まったらしく、これが意外な組み合わせながらピタリとハマっていた。そもそも綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが四姉妹という時点で虚構世界としか言いようがない現実離れした布陣なので、普遍的で昭和の日本映画風とも言える今作の演出は合っていたし、是枝監督がこういう作品に仕上げたのも新鮮だった。
脇を固めるのがほとんど芸能人としてのポジションを確立している有名俳優ばかりなので、四姉妹の周囲で起こっているドラマがどれも嘘っぽく見えてしまうというのはあったが、加瀬亮はちゃんと存在感消していて流石だった。あと池田貴史はキャラとして美味しすぎるしズルい立ち位置だが、やっぱり美味しいキャラになっていて良かった。
あと、最後の過剰にエモーショナルな盛り上げは要らんかなとも思えたが、これだけ豪華な布陣で臨んでいるのだからそのぐらいのサービスは必要だよな、というぐらいのことだ。それよりもなぜか途中から広瀬すずが貴乃花親方に見えてきて、これだけは悲しかったのだが、まあ、そんなこともどうでもよく、いつまでも四姉妹がキャッキャやっているのを見ていたくなった素敵な作品で、素晴らしいもの観せていただいたということしかない。良かったな〜(しみじみ)。