冒険を求めて海を目指す町ネズミのガンバは、潜り込んだ港のネズミたちのパーティで傷を負った小ネズミの忠太と出会う。忠太は故郷の島で仲間たちを殺戮している残忍な巨大白イタチ・ノロイから島を救ってもらう為、助けを求めて単身海を渡って来たのだという。ガンバと7匹の仲間たちはノロイを倒し忠太の故郷を救うため、島へ渡る船へ侵入して冒険の旅に出る。
美術監督・小林七郎の仕事が素晴らしくて、出崎監督との仕事で見せるリアリティと大袈裟な劇画調の融合のような美術、作画はこの時期でしか作り得ない唯一無二のアートだ。今これをやれば戯画にしかならないだろうが今作では世界観に見事に調和していて、それを堪能出来ただけでも観られて良かった。山下毅雄の音楽も凄い。前衛的と言っていいほどの自由さで暴れまわるスコアが劇中の熱いキャラクターたちのダイナミズムを見事に増幅、これもやはり今では成立しないんじゃないだろうか。声優陣も皆良かったが、定番としてあまりにも聴き慣れていた野沢雅子(ガンバ)の声を改めて味わうと、少年性をアニメキャラクターとして具現化した声の凄味を再確認させられた。
そしてガンバを始めとしたキャラクターたちもマンガ映画の特性を生かして程よくデフォルメ化された魅力的な作りで、中でも敵ボスのノロイの不気味さは、あらゆる禍々しさを象徴させたようなキャラ造形が数あるボスキャラの中でも異彩を放っていた。かなり怖いし、がつがつネズミを咬み殺す凶悪さは可愛いネズミたちの物語として見ているチビッコたちにインパクト与えまくったと想像出来る。
余談だけど、この映画、昔父親に上映会に連れていってもらった際、機材トラブルか何かで途中で上映終了してしまった悲しい思い出があったので、今回リベンジの意気込みで子供たちと一緒に鑑賞していたのだが、途中からどうも記憶があやふやで本当にこの作品だったのか怪しくなってきた。どうも『北極のムーシカミーシカ』と混同していたらしい。なぜかはわからん。ちなみに子供たちは喜んで観てたから良かった。古い感じがするとは言ってたけど。