前編は擁護したい気持ちもあり、後編への期待も有り、色々目を瞑った上である程度の高評価だったのだけど、これは…これはヤバい!寒い!ヒドイ!楽しい部分があるからあとは良しと出来るレベルじゃなかった…。正直悲しい。
とにかく見所がない。もっとも期待するべき特撮、ウルトラファイトな部分だが、ために貯めて爆発させた前作より明らかにパワーダウンしていて、格闘シーンの決着のつけ方も何だそりゃという感じ。立体機動装置はますますどこにフックかけて飛んでるのか訳分からないし全然燃えない。演出のテンポもオープニングから棒立ちで全く緊張感が伝わってこないし、その緊張感のなさが全篇に漂っている。そして敵が謎解きを全て喋りまくって、映画そのものでは全く物語が動かないという酷さ。あれだけ人々やエレンに恐怖を与えていた巨人たちの日常的な怖さが今作では全く存在しないかのようで「ああ、なんか向こうに巨人見えるね、迂回しよう」ぐらいのレベルなのも大問題だ。巨人への恐怖こそがこの映画世界の大前提じゃないの⁉︎さらに町山智浩が脚本に参加している甲斐あってか熱い台詞があるにはあるのだが、その台詞が発せられるまでに映像や物語での積み重ねが無く、すべて唐突なので心に響くどころか単に不自然で薄ら寒い台詞になっていたのも辛い。
せっかく水原希子も本郷奏多も熱演なのに無駄遣いになっているのも残念。野蛮な世界の中で腕力の無いアルミンの存在意義、役割というのが全く見えない。単にちょっとエレンと仲良くてメカに強いだけの人。ミカサは大人しい女の子がほんの数年で超人的な戦士になってる時点で意味不明だが、過去を切り捨てた孤高の性格から人間らしい人物へ戻る過程も納得度低い。
何よりも観ていて、「それって、そもそも…」っていう部分が多すぎて映画に入り込む隙がないのが辛かった。一番は「あの人」たちにそんな能力があるのなら、そもそもそんな回りくどい計画も陰謀も必要ないんじゃないの?というところで、もうこちらとしても一体何を見せられているんだろう、この登場人物たちは一体何をやっているんだろうという気持ちしかない…。
なので劇中で『この世の果てまで』を流してみたり、ラストに「実は…」みたいな仕掛けをいれたりしていても、映画自体がスカスカなので単に頭デッカチの独りよがりとしか感じられない。結論としてやっぱり特撮は面白いけど監督作品はアレだな、といういつもの樋口真嗣作品だった。そして映画を語る人としての町山智浩の評価は変わらないが、作る人としての町山智浩には次回期待したい、という感じ。
ところで普通タイアップで流れるエンディングテーマ曲が映画鑑賞後の気分を台無しにするのはよくあるが、今回はセカオワのED曲が一番良かったという稀有な事例でもあったよ。