芸達者と言われるような俳優の名前が並んでいて、人情話みたいだし、華やかだった『海街Diary』のあとだけに地味そうだな、というイメージで劇場に入ると客の殆どがシルバー層で、その予感はますます強固になった。で映画が始まると同時に樹木希林、小林聡美が演じる母娘の日常会話劇が始まり、当然ながら上手いし、年寄り達もクスクスと笑ってはいたけど、こちらとしてはいかにもな役者がいかにもな演技で日常風景やってるとしか見れなくて、シラけた気分がふつふつと湧いてきてしまった。そして次々と出てくる役者たちも、こういう作品ならこういう人選だろうな、という安定感で新鮮味を感じられなかったが、それでも阿部寛のダメ人間ぶりやリリー・フランキーの不気味さはマンネリを超えた楽しさがあったし、子役の登場する場面は全て引き込まれる魅力があった。
そんなキャラクター達の背後に写る小物類から積み重ねられた部屋や団地、郊外の風景そのものがありふれた現実を剥き出しに見せつけながらも郷愁と愛おしさを感じさせ、ストーリーやキャラクター達よりも雄弁にテーマを語っていて、役者や物語が正しさゆえの圧迫感で寒々しいのに対して、風景は冷ややかに現実への愛憎を写し出していた。ひょっとしてドラマ部分はイヤミとして作ってるのではないかとすら思ったぐらいだ。