大阪から東京へと越してきた泉谷朝子(唐田えりか)はかつて運命的な出会いを経て恋人となったものの忽然と姿を消してしまった麦〈バク〉と瓜二つの丸子亮平(東出昌大)と知り合う。過去の傷から逃れるように亮平を避ける朝子だったがルームメイトのマヤ(山下リオ)や亮平の同僚・串橋(瀬戸康史)らとともに交流する中で段々と彼に惹かれていき、やがて2人は同棲を始める。優しく包み込むような亮平の愛情を得て満ち足りた毎日の筈だったが、行方知れずだった麦がモデルとして活躍していることを知り、彼女の心は揺れ始める…。
監督・脚本:濱口竜介、原作:柴崎友香、脚本:田中幸子、撮影:佐々木靖之、美術:布部雅人、編集:山崎梓、音楽:tofubeats。
ざっくりまとめると清濁併せて人生です、みたいな話(?)なんだけど、その濁った方面、というか他者には理解し難い側面の人物描写にドキリとさせられ、居たたまれなくなるムズ痒さが快感だった。社会的、倫理的な正しさの枷に嵌められることなく自由に生きる主人公の姿を魅力的に突き付けてきて、世の中の様々な「~らしさ」にアンチテーゼを突き付けてくるようなエグさがあった。
情景描写も美しくて映画的な快感も味わえたし、役者も良かった。特に東出昌大の宇宙人ぶりは今作でも発揮されていて、朝子が最初に亮平と出会う場面では謎めいたバクの人格から温和な亮平という存在へと移行していく様が表情、立ち振る舞いからありありと感じられて鳥肌モノだった。あと山下リオが出ていたのも嬉しかったよ。