yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー (2022年・カナダ、ギリシャ)

 体内で新しい臓器を生み出す症状が人々に発生し始めた世界。ソール・テンサー(ヴィゴ・モーテンセン)は自らの体内で生まれた新しい臓器をパートナーのカプリース(レア・セドゥ)が切除しアート作品として現出させる前衛芸術パフォーマンスを行なっていた。その活動に魅入られていく臓器登録所のウィペット(ドン・マッケラー)とティムリン(クリステン・スチュワート)、息子の死体でパフォーマンスアートを行うよう提案してくるラング(スコット・スピードマン)など、ソールの周囲に様々な人物がそれぞれの思惑を抱いて渦巻いていく。

監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ、音楽:ハワード・ショア、美術:キャロル・スピア、撮影:ダグラス・コッチ、編集:クリストファー・ドナルドソン、特殊メイク:アレクサンドラ・アンガー&モニカ・パベス、衣装:マユ・トリケリオティ、製作:ロバート・ラントス。

 

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 久々のクローネンバーグ作品で、しかも初期作と同じタイトルだし、SF的なイメージが前面に押し出されているしで、かなり期待高まりつつも主演がヴィゴ・モーテンセンなので、どうなのかな、とも思いながら観に行ったんだけど、もうどこをどう切ってもクローネンバーグの映画としか言えない作品だった。意味不明で頭のおかしな作品世界上を、更に頭のおかしい理屈を持ってキャラクターたちが蠢いているのに、クローネンバーグ自身が作品世界を信じて真摯に構築しているから、こちら側もそんな狂気の世界に魅せられ、同期し順応し、作品世界に没入していく。映画を観るというのはこの感覚だよな〜と嬉しくなった。映画を観る醍醐味って、リアリティがあるとか、感動があるとか、そういうことじゃないなと改めて実感した。

 

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 俳優も良くて、ヴィゴ・モーテンセンは、彼とクローネンバーグのコンビ作品は好きとはいえ、クローネンバーグに期待する作風とはちょっと違うという気持ちが今まであったが、今回はヴィゴ・モーテンセンの怖い顔と初期中期のクローネンバーグの幻想的な世界が融合して、すごく良かった。ラストシーンの『んー、美味い!』の表情とかヴィゴ・モーテンセンの顔面力の効果絶大だった。で、ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワートらのセレブ要素がクローネンバーグのアングラ要素をいい意味で中和していたし、クリスティン・スチュワートの観ていて不安を煽るような存在感は悪夢的世界に見事にハマっていた。

 

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 臓器が増殖するという設定は、アートの定義やクローネンバーグ自身の身体の衰えなどもテーマとして入っていそうだとか色々深読みが出来そうだし、好きな人は考察するだろうけど、個人的には悪夢的、幻想的な世界観としてそのまま楽しんだ。そんな世界観の中で動きまわる不思議なキャラクターたちを見ているだけでとても至福な時間だった。とくに不気味かつスタイリッシュなドリラーキラーな仕事人コンビは最高だったよ。クローネンバーグは次作も是非SFでやって欲しい。いや、SFじゃなくても長生きして作品作ってくれるだけでいいか。

 

CRIMES OF THE FUTURE - Official Teaser - YouTube

 

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