yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

まんがの作り方 全8巻 (リュウコミックス) / 平尾 アウリ

 『推しブドウ』が面白いんで過去作品にも手を出してしまったが、面白かった。決して予定調和的には物語が熱を帯びていかず、独特の平熱感が最後まで徹底していて、主人公の川口さんと森下さんの関係性の心地よさで作られた世界を眺めて楽しむことに特化した作りがとてもいい。絵も好き。『まんが道』とかそういう方向性はほぼ無いんだけど、この起伏の無さでこのタイトルというのは実はある種のカウンター的な何かだったりする、などということは、多分無いな。

 

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東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫) / 小野 不由美

 前作まででいいところ全部持っていっていた延王と延麒が主役ということもあって、敵味方がわりとハッキリとしたオーソドックスに進行する物語で、キャラクター物としてもシリーズが展開していくのかな、という印象。こちらもすでに世界観と登場人物に愛着湧いてるので楽しく読んだ。

 

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風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫) / 小野 不由美

 現代日本を舞台にしたホラー『魔性の子』の裏設定として存在した異世界の物語を、異世界側から語り直すことによって物語世界の表裏を逆転させてこちらを表側とするシリーズへ変換させた作品で、それがその後も続く長寿シリーズになっていったという文脈だけでも面白い。

 対の作品と矛盾しないように細かな設定やエピソードに無理矢理感が出てるところもあるけれど、そこも逆にそうやってここのパズル埋めてきたか、という面白味になっていた。

 シリーズの物語としても前エピソードで主人公の陽子が読み手とともに右も左も不明な世界に放り込まれたままに冒険していったのと違い、『十二国記』世界の有り様がより掘り下げられていて、今後のシリーズの先鞭として期待感を煽ってくれる作品でもあった。

 

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魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫) / 小野 不由美

 どうしようもなく切実に相手を必要としているのに、その相手からは相応には必要とされないという、魔性の子・高里と教育実習生・広瀬という主人公ふたりの残酷だが普遍的な友情物、というより恋愛物として面白かった。同時にその関係性がファンタジーに耽溺する読者と物語世界の関係としても投影されていて、読者がいくら現実世界に疎外感や孤立を感じても、物語世界に住まうことは出来ないという残酷さが高里と広瀬のラストシーンで物語とシンクロして最高潮を迎える様がとても切ない。そして、だからこそ読者は虚構作品を求め、愛するというファンタジー作品が存在する根源的な要因の一つを顕在化していて、ここをシリーズの起因とした『十二国記』は魅力的になる筈だと思った。

 

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月の影 影の海 (上・下) 十二国記 1 (新潮文庫) / 小野 不由美

 隅々までに構築された「異世界」のオリジナリティと存在感で現実におけるそれとは別次元のリアリティを楽しめて面白かった。当時のラノベ界に異世界転生物というジャンルが確立されていたかどうかは知らないけど、もし今作がその先鞭をつけていたとしても、文体や言葉選びにここまで拘って世界を構築した面白味は凡百の作家には簡単に模倣出来きそうにない。それにしてもラノベの刊行物として世に出たというのに主人公陽子が泥にまみれて這いつくばって異世界を彷徨う展開が全くライトじゃなくて良かった。

 

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劇場版 SHIROBAKO (2020年・日)

 アニメ制作会社『武蔵野アニメーション』、通称『ムサニ』の制作進行として成長した宮森あおい(木村珠莉)。しかしムサニはとある企画の頓挫から規模を縮小し、かつての仲間たちも多くが会社を離れていた。そんなある日、新社長渡辺(松風雅也)に起死回生の劇場用アニメ製作を告げられたあおいは、アニメに夢を抱いてともに業界に飛び込んだ安原絵麻(佳村はるか)、坂木しずか(千菅春香)、藤堂美沙(高野麻美)、今井みどり(大仁田仁美)ら高校時代の仲間たちや、新たなメンバーたちとともに映画の完成を目指して奮闘を始める。

監督:水島努、脚本:横手美智子、キャラクター原案:ぽんかん⑧、キャラクターデザイン・総作画監督関口可奈味美術監督:垣堺司、竹田悠介、アニメーション製作:P.A.WORKS

 

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 自分自身の好きな作品を創作したいというアーティスト的な夢を持つあおいと、楽しい仲間たちが集う集団であるムサニという組織そのものが主人公として並立することの矛盾がスルーされていたのは、テレビ版同様に消化不良を感じた。あと、表現技術の限られていた黎明期に低年齢層向け作品が多かったことで生まれた〈子供たちに向けて作られる物〉というアニメの幻想を都合のよいところだけ無頓着に援用していて、アニメ製作そのものを主題におきながら意図的にアニメーション作品の定義を曖昧にしているようにも感じられた。

 

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 とはいえ、テレビの続きとして充分に楽しかったし、散らばった仲間たちを集めて目的を達成するという予定調和的な物語をミュージカルや劇中劇をしつこいぐらい入れ込んだ過剰な演出や、細かなディテールと重みのあるCG使いで盛りに盛って、ただのテレビの続きではないようにビルドアップされていたので、劇場用作品としてもちゃんと堪能出来た。その劇中劇が全く心惹かれないのはどうかとも思ったが、任侠映画オマージュのあおいと楓(佐倉綾音)の討ち入り場面は楽しかったりしたので、ここら辺は各自の趣味嗜好での好き嫌いかな、という感想。

 

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https://youtu.be/P6Q1tz83SDI

 

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屍人荘の殺人 (2019年・日)

 ミステリー小説オタクだが全く推理が当たらない葉村(神木隆之介)は大学のミステリー愛好会の会長でホームズを自称する明智中村倫也)から万年助手のワトソンとして振り回される日々を送っていた。そんなある日、謎の美人女子大生探偵、剣崎比留子(浜辺美波)からロックフェス研究会の合宿参加を持ちかけられる。部員に脅迫状が届くなど事件の匂いに惹かれて参加を決めた葉村たちが到着したのはペンション『紫湛荘』。そして曲者揃いの参加者たちと勃発する異常事態の中で殺人事件が発生し…。

監督:木村ひさし、原作:今村昌弘、脚本:蒔田光治、撮影:葛西誉仁、美術:林田裕至、佐久嶋依里、編集:富永孝、音楽:Tangerine House。

 

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ネタバレ有り。

 


…とは言え、ミステリの謎解き部分以外の、ジャンル特定自体がネタバレに当たるのかどうか、実はよく分からなかったりもするのだけど。本作が宣伝においてゾンビを扱ったホラージャンルでもあることを隠してあるのは、以前の『ワールド・ウォーZ』の時のように、単純にゾンビだと客が来ないという思い込みもあるんじゃないかとも想像出来るが『カメラを止めるな!』や『ウォーキング・デッド』の人気もあってゾンビジャンルそのものの人気は高騰してるので、そんな事はないのかな。しかし観客の大半は小学生だったし、僕自身もゾンビ物だと知ってたら小六の娘を連れて観にきたりはしなかったので、理由はどうあれ気持ち悪さを隠した宣伝は功を奏してたのかも知れない。

 

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 で、映画の中身に関しては、ゾンビ物としてはやっぱりぬるくて、全年齢に対応する為に残酷描写はレントゲン写真風の映像で代替えしてあり、それはそれで苦肉の策として悪くなかったが、さすがにそればかりだと飽きてしまった。あとエレベーターが劇中の重要な仕掛けとして登場するわりには御大ロメロ版『ゾンビ』へのオマージュやリスペクトは欠落していたりして、もうちょっとゾンビ愛があってもいいんじゃないかとは思った。

 

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 しかし、そんなヌルさゆえに、ホラー苦手な子供も楽しめる全年齢対応のゾンビ映画になっていて、ドヤ顔感を抜いた堤幸彦的演出もテレビ的な軽さで観やすく、親娘で安心して楽しめる正月映画になっていた。個人的にも神木くんと浜辺美波がキュートで満足出来たし、塚地が『アイアムアヒーロー』に続いてまたゾンビになっていておかしかったりもしたので、満足、かな。

 

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https://youtu.be/yzjS8bLrtIc

 

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