自閉症スペクトラム障害を持っていることを不安視した父親から生きる術として徹底的な殺人術を教育されたクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)は同時に超人的な計算能力を持っており、獄中で出会った裏社会の会計士フランシス(ジェフリー・ダンバー)からその仕事術を伝授され、現在は会計事務所を開きながら裏で世界中の危険人物の裏帳簿を仕切りつつ、暗殺者としても活動していた。ある時、大企業からの財務調査依頼を受けたウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼は経営トップのラマー・ブラックバーン(ジョン・リスゴー)から一方的に打ち切られる。同時に社内の協力者デイナ(アナ・ケンドリック)ともども謎の暗殺者ブランクストン(ジョン・バーンサル)に命を狙われ始め、また財務省犯罪捜査部のレイモンド・キング(J・K・シモンズ)、メリーベス・メディナ(シンシア・アダイ・ロビンソン)もウルフを追うのだった。
監督、製作総指揮:ギャビン・オコナー、脚本:ビル・ドゥビューク、撮影:シーマス・マッガーベイ、音楽:マーク・アイシャム。
キャラクター造形がよく出来ていて、かなりエキセントリックな設定の主人公だが、様式に則った生活スタイル描写を丁寧に見せていくことでただの超人ではない人間的魅力を感じさせて、ちゃんと共感させてくれた。他のキャラクターたちもそれぞれ「普通」ではないが感情移入出来るように愛情を持って描かれていて、万能の神みたいな『秘書』の設定などもあって荒唐無稽なシラけたジャンル映画になりそうな所を細かなディテールを積み重ねたキャラ設定とはぐれ者たちの泣かせる生き様描写、そんなはぐれ者同士の淡い連帯感の醸し出しで、細かく涙腺刺激してくる感動的な作品になっていた。
ラストの展開もジャンル映画としてはけっこう意外で、主人公と「ある人物」の邂逅までは予定調和かも知れないが(それもベン・アフレックと「ある人物」がそういう関係というのは誰もが分かっていても顔面的にどうなんだ、というのはあるんだけど)、その後の流れはしみじみしていいものなのか、何なのかよく分からないことになっていて、それが凄く良かった。
あと、何よりベン・アフレックのヌボーッとした顔が今作でも見事にハマっていたし、トレーラーハウスなどの周辺の道具立ても良くて、やはり主人公のキャラ立ちが本作の面白さの中心だったので、続編とか作り易そうではあるんだけど、今作の感動を消さない為にも続編を復讐譚にする為に「ある人物」を殺す、という展開だけはやめてくれ〜と切に願うのだった。
映画『ザ・コンサルタント』本予告 2017年1月21日公開 - YouTube