しかし読み進めていくうちに段々とそのしつこさが味になり癖になってくるという不思議な読み応え。基本的にキタのやっていることは自治世界を裏から操作して混乱させるという悪の所業で、しかしそれを物語として収束させることなく淡々とその作業を描写するのみなので、架空の政治・社会小説としての楽しさもあるが、かつて青春を過ごした故郷へ戻ったキタが昔のままにそこで暮らす人々と自分自身の変化を実感して少年時代と訣別するという苦い青春小説としての味わいが一番響いてきた。
それにしてもこれだけ読み応え充分の力作が全巻通して読める状態にないというのは勿体無いよ。