幽霊を見ない主人公による怪談話の収集録。怪異を見ることが出来ない主人公は殆どの読み手とイコールなので、大袈裟な怖さではなくじわじわ来る恐怖の味があり、さらに主人公を筆頭とする登場人物たちの怪異体験への少しズレた視線や受け取り方が怖いという仕掛けになっていて、怪談話の怖さがどの段階からどう発生しているのか自然と考えさせらる面白さがあった。ただ本作は一応エッセイだから、主人公が怪談話を斜め方向に受け取ったりするのは作者が自己を〈不思議ちゃん〉として演出している風に見えちゃうので完全なフィクションで読みたかった。