作者が言ってる通り、殆どがエピローグ的な内容なんだけど、どれも秀逸すぎる。安達が家を出るエピソードの母娘の距離感の描き方とか凄い。他のエピソードでも主人公2人以外の関係性は相変わらず予定調和に収束させず、ただあるがままに冷徹に見据えながら、それでも少しだけポジティブに描いていて、リアルに感情が迫ってくる。それがあるので主人公2人が更に際立ってきて、やっぱりこのシリーズは面白い。12巻ぐらいまでと言わずにずっと書いて欲しいわー。
白い暴動(2019年・英)
1970年代後半のイギリス、イギリス国民戦線を中心とする過激な排外主義運動が高る中、芸術家のレッド・ソーンダズら数人の若者たちが「ロック・アゲインスト・レイシズム」を発足し、ロックとデモで差別主義者に対抗した姿を振り返ったドキュメンタリー。
監督・脚本・編集:ルビカ・シャー、製作・脚本:エド・ギブス、製作総指揮:ポール・アシュトン、撮影:ズザンネ・ザラバティ、音楽:アイスリング・ブラウワー。
パンクムーブメント期の英国におけるヘイトクライムの状況が想像以上にシビアで驚きだったが、そこからこの映画で描かれる市民運動によっていくらかマシな状態に持ち直したことは、今の日本の空気に辟易した気分に少しは慰めになった、ような気もする。まあ、これはパンクというよりはデモや人々の意識の功績だとは思うし、そこに音楽の力が作用していたとしたら、それはそれでちょっと複雑な気分もあるのだけど。当然この社会で何をやるにも、やらないにしても、全ては政治と不可分で、音楽に政治を持ち込むな、などというそれこそ政治的な物言いは頭がおかしいと思うが、音楽の持つ一体感の快楽が全体主義の気持ち悪さと表裏一体であることは同時に意識しておきたいところです、というのは改めて思った。それはさておき、この映画自体は当時の映像もかなり見せてくれて、時代の空気を感じられるドキュメンタリーとして面白かった。そしてやっぱりクラッシュがカッコ良かったのだった。
不揃いの連理(5) (角川コミックス)/みかん氏
1巻の最初の辺りは絵がちょっと無理かなとか思いながら読んでいたんだけど、読み進めていくと群像劇として多彩なキャラクターに面白味を感じはじめて、いつの間にか絵も凄い見易くなってた。で5巻も面白かったんだけど、今回は伊織と南、沙織と雫のひいき組の出番が少なくて次に期待するというただのオタクとなった。
ルックバック (ジャンプコミックス)/ 藤本 タツキ
webでの公開後、クレームによって修正されていた犯人像が今回の単行本で再び修正され、ニュアンス的には元の感じに近くなって、京本と犯人がともに藤野の枝分かれた分身としても読めるようになったのは良かった。そのことと、創作による暴力へのアンサーがただでさえ熱い青春物に更なる厚みを加えていて凄い作品になっていた。あと、タイトルや最初と最後のコマの書き込みから今作がoasisの名曲に何らかのオマージュがあるとは推測出来るのだけど、確かに今作からは当時oasisに惹きつけられた、ただ能天気な応援ソング的なものではないポジティブさを感じた。あの曲がテロへのアンサーソングに期せずして成ったことは関係しているのか分からないが、しかし最後のコマのangerに打ち消し線が見えるのは意味深だとは感じた。ただ、エヴァンゲリオンにどっぷりハマったオタクみたいに、表現された点と点を繋いで直接描かれていない部分を想像で補うような楽しみ方は、そこに表現の真意などを感じるのではなく、単に創作物の枝葉を妄想するだけならば不毛だと思ってるので、そこはあんまり気にしません…。
怪獣8号 4巻(ジャンプコミックス)/松本 直也
面白い、けど、通常のジャンプのバトル漫画の流れなので、タイトルにまでわざわざ持ってきた『怪獣』に対して何か新しい意味合いを与えてくれるような作品ではないのかな、という気もしてきた。
今日、小柴葵に会えたら。 (3) (REXコミックス) / 原作・竹岡 葉月、漫画・ フライ
設定ありきに感じられる主人公のキャラクターがやっぱりいまいち理解出来ないんだけど、絵が可愛いのと、ここまできたら物語の展開が気になるので読んでしまってる。現在と過去の物語が繋がってきた時に盛り上がるのかも知れない。