アス (2019年・米)
夏季休暇を過ごすため、夫のゲイブ(ウィンストン・デューク)、娘のゾーラ(シャハディ・ライト・ジョセフ)、息子のジェイソン(エヴァン・アレックス)とともにサンタクルーズを訪れたアデレード(ルピタ・ニョンゴ)。彼女は幼少時にサンタクルーズの遊園地で迷子になり、自分と全く同じ姿の少女に出会ったことをトラウマとして抱えていた。そしていま、彼女と家族の前に自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れ……。
監督・脚本・製作:ジョーダン・ピール、製作:ジェイソン・ブラム、撮影監督:マイケル・ジオラキス、プロダクションデザイン:ルース・デ・ヨンク、編集:ニコラス・モンスール、衣装デザイン:キム・バレット、視覚効果監修:グレイディ・コファー、音楽:マイケル・エイブルズ。
豊かな生活を送れているということが貧しく暮らす側があってこそ成り立っているという現代社会の構造をそのままホラーとして作品にしてあって、言いたいことはビシビシと伝わってくるけど、逆に伝わり過ぎて説教臭かったりもした。終盤までは作品世界で起こっている出来事が正体不明でホラーとして楽しめるのだが、物語の輪郭がクリアになるにつれて社会的テーマが明確になる代わりに得体の知れなさからくる恐怖が薄れてジャンル映画としては物足りなくなる。しかも全てを説明する謎解きそのものがセカイ系な解答で、現代社会のメタファーにしても、ちょっとそのまま過ぎた。
しかし金をかけておかしなバランスの映画作ってるのは偉い気もした。あと、『ハンズ・アクロス・アメリカ』という80年代の慈善活動が作中の重要な出来事のひとつとして登場したが、その扱いが映画『ボヘミアン・ラプソディ』での『ライヴエイド』同様、わりとストレートに素晴らしいものとして描写されていて、少し前までの80年代ボランティア活動の、能天気で偽善的でダサくもあるという余裕のある認識は、トランプ政権に代表されるような自己の利益にのみ正直であればOKという時代にあっては保持出来ないという悲しく厳しい現実を感じた。