ストーリーで復讐物みたいに書いたものの、本当の意味で復讐を行うのは終盤の展開だけで、一般社会との繋がりを失った男が闇の世界へ引き込まれ、漫画的な面白暗黒世界の中を巡りながらバイオレンス劇を繰り広げる映画、と言ったほうがしっくりくる、そんな映画。そしてキアヌ・リーヴスのアクション映画として存分に楽しめる作品だった。全篇肉弾銃撃アクションのつるべ打ちで、殴って撃つ、車で轢いて撃つ、という描き方によってはエグさだけが際立ちかねないヒドいバイオレンス満載ながらも、どこか儚さを漂わせるキアヌ・リーヴスの存在感がただのマッチョなアクションとは一線を画すエレガンスを生んでいてかっこいい。そして人間同士の重みが感じられる生々しさを持ったエグいアクションとアクロバティックで荒唐無稽なキアヌ無双ぶりのバランスが絶妙で、きちんと爽快感のあるアクションになっていた。伝説の殺し屋が表舞台に戻って来たというプロットと、ハリウッド大作から離れていた感のあるキアヌのアクション大作への復活が映画と現実をリンクさせて、こちら側のテンションを上らせた。
で、キアヌが巡る闇の世界はニューヨークを舞台にした重厚でリアリティのある雰囲気を持たせながらも基本的には楽しい作り物感が満載で、シーンによって基調となるカラーを統一させた映像や犯罪者ギルド、闇の独自ルールといった設定がマンガ的な楽しさを演出していた。
そこで蠢く人物たちもそれに相応しくキャラクターが立っていて、『ゲーム・オブ・スローンズ』でのシオン役と同様にバカ息子を演じているリリー・アレンの弟アルフィー・アレンは小物感が最高だったし、殺し屋マーカス役のウィレム・デフォーも一癖ありそうで実はそのまんまという、捻りにひねりを加えたらストレートになってしまったようなキャラクターが良かった(不味そうな健康ジュース作ってるのが萌える)。もう1人の殺し屋で悪女的立ち位置のパーキンズ(エイドリアンヌ・パリッキ)が今作のようなマンガ的裏社会の住人としては無くてはならない種類のキャラだったり、ジョン・レグイザモが古株として顔を効かせていたりするあたりもマンガ世界の構築に重みを与えていた。
すでに続編の製作も決定しているそうだが、次はわんちゃん殺さないで欲しいね。