yudutarouログ

Twitter(ID:yudutarou)で観た映画を確認しようとしたら非常に面倒だったので、メモになるつぶやき(主に映画とか音楽)を移植。なので2014年まで時系列バラバラ。

エンニオ・モリコーネ、自身を語る (河出書房新社)/エンニオ・モリコーネ、アントニオ・モンダ 著、中山 エツコ 翻訳

 聞き手の作家とモリコーネとの数度に渡る対話形式で、話題もその都度大雑把に選択されているので、年代ごとにじっくりとモリコーネの足跡を辿るようなものではなく、ざっくりしたインタビュー本といった感じで読み物としては物足りない。しかし温和な語り口の中にも自らの作品への自負、映画音楽家ではなく音楽家として評価されたい欲求が出ていたりするのは面白かった。中でも『ラスト・エンペラー』サントラの依頼がベルトリッチから来なかったのを悔しがってたのは面白いエピソードだった。実際、モリコーネがやってたら色々歴史変わってただろうな。

 

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僕の心のヤバイやつ【特装版】(3) (少年チャンピオン・コミックス) / 桜井のりお

 面白いと言われて読んだら凄い面白かった。鬱キャラの妄想を具現化したファンタジーなのに、丁寧に関係性を積み重ねているから作品世界に嘘臭さを感じないし、登場人物全員が基本的に善人で、主人公2人がとても可愛いのが良い。何よりキャラクターの作り方上手すぎ。山田さん良い。やっぱりラブコメ楽しいな…。

 

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citrus +(2)特装版 (百合姫コミックス) / サブロウタ

 後日譚的なシリーズかと思いきや普通に本編から地続きで進行していて、2巻では新キャラも出てくるし、しかも着地点が分かってるだけに過剰なストレスなく楽しめるという最高なシリーズ。相変わらずコマ移動しながらの心理描写が上手くて凄い。登場キャラ全員に愛着ありすぎるので、それぞれが幸せな結末を迎えるまで延々と続いて欲しい。通常版の表紙は「はるみん」と「まつり」なのか…。欲しいな…。

 

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BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか(柏書房)/キム・ヨンデ 著 、桑畑 優香 訳

 なぜ世界的に成功したのかについての考察とディスコグラフィーのレビューで構成された防弾本。BTSは世界的成功の割にキャラクター以外の部分に言及されることが少ないから新鮮ではあるが、やはりアーティスト本はバイオ本や本人たちの言葉が主体のもののほうが面白い(昔のRO社のやつみたいな)。しかもBIG HITがどういう戦略を使ったかや、K-POP勢の中では自分たちの率直な意見を表明するメンバーの、しかし明らかに線引きされたその内容の境界線はどこなのか、など一番気になるポイントはスルーされていて、兵役に関しても日本語版への寄稿で少しだけ触れるに留まるなど本気でBTSという現象を社会的に解析していこうというものではないのも物足りなかった。

 

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今日、小柴葵に会えたら。 (2) (REXコミックス) / 原作・竹岡 葉月、漫画・ フライ

 雰囲気重視と構成のあざとさが気になりつつも、そんな部分こそ、この手の作品を読む楽しみを突いているとも言えるし、キャラクターの絵柄も綺麗なので楽しく読んだ。とは言え高校入学時にキャラを変更してカースト上位に入り込む打算的な性格なのに天然気味の純粋キャラという主人公の設定はいかにも作られた感があって、やっぱり引っかかるかな。

 

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宝石の国 11 特装版(プレミアムKC ) / 市川春子

 もうホントにヤバい。とりあえず読み終わったあと、娘と、これはアニメ2期やるの難しいよね〜という感想を交わす。安定したキャラクターに逃げたり安心の物語でお茶を濁したりもしない冷徹で壮大なSFを、それでも相変わらずのチャーミングさとユーモアを保って紡いでいく市川先生凄し、だよ。特装版のおまけへの力の入れようも凄かった。

 

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宿借りの星 (創元日本SF叢書) / 酉島 伝法

 現実とは全く異質に思える作品世界を構築して、その世界で大叙事詩を紡ぐ圧巻の小説だった。前半は独特の用語と世界観に難儀する部分もあるが(しかし、作者自身によって挿入された流麗なイラストレーションが想像力を多分に補ってくれる)、祖国を追放された流れ者が義兄弟とともに変わり果てた故郷に戻り、かつてのしがらみと新しい使命の間で苦悶する任侠映画的なプロットや、登場する異種族キャラクターが昆虫を連想させる造形なので、現実から遠く離れた世界を堪能しながらも脳内で現実と解離しすぎずに読み進められる。と同時に物語の構造自体が先へ進むほどに人間世界に近づいていく構造になっていて、作品の異形ぶりが薄れていくことで当初の非現実感にノスタルジーすら喚起される仕組みも新鮮。現実を超える妄想力をSFとして具現化した傑作だった。

 

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