書籍
大坪砂男が『天狗』一作のみの作家のような書かれ方をしていたりして、しかし第一集を読んだら傑作短編ばかりじゃないかと思ったんだけど、今回第二集で『天狗』を読んだら、確かにそう語られるのも無理ないかなというぐらい独特の作品で、笑いと狂気の境界…
『セデック・バレ』の記事目当て。情報なにも知らなかったので、主役の人が役者じゃなくて牧師だったというのはびっくりだ。このムック自体はタイトルのわりに日本の話中心だった。渡辺文樹の話とかは良かった。
文章一つ一つが凝ったうえに洒落ていて、特に戦後の猥雑なムードのある短編は、ずっと浸りたくなる世界。ほとんどが探偵小説の体裁をとっていて、当然謎解きがクライマックスに配置されているが、そこは物語として面白味のある可能性が提示されるだけで、探…
前知識無しに読んだので、陰謀論や預言者の出現など現代(当時の未来)を予見したようだ!などと思って読んだが、あとでラファティのアレコレをネットで見ると、実は結構本気で幻魔大戦みたいな話だったのかなとも思った。どちらにしても全篇妄想と現実の際…
収録2篇とも、颯爽とした女性の生き様が読みどころだとは思うが、個人的には生きていく上でいつの間にか設定されたルールの細かい描写、そしてそれが揺らいでいく感覚が面白かった。あと読み易いのにどこかつかみどころの無い感じに独特の魅力を感じた。
真魚さんは紹介してくれる作品の選択と語り口が面白いので購入。本著はタイトルからしていつもの系統とはちょっとズレていて、やっぱり書籍を出すにはこういう女子みたいなタグを付けんといかんのかな、とは思ったが、『キャリー』のクライマックスの文章で…
面白い。中でも『青い眼の赤トンボ』は読んでいて脳内でそのまま映画になりそうな脚本。観たかった!『五拳』『アンドロイド』もハチャメチャだけど(だけに?)映画になったらきっと楽しかっただろうな。おまけ冊子(発行人の方と監督との手紙のやり取りを…
三章仕立て。一章は珍しく(と言っても震災以後はその方向か)現実の社会状況を反映させて進行するが、二章以降はいつもの現実と観念的世界ごちゃまぜのドタバタへ。なので統一感は薄いが、神林作品にはよくあるパターンで、各場面で脳みそをグリグリと刺激…
基本的に劇中で起こるドラマは全くピンと来なかったが、癖のある絵柄と独特のコマ運びはけっこう不思議で面白かった。
二段組で630頁超。時間を見つけてチビチビ読んでやっと読み終わった。あとがきにもあるが、ネガティブな事柄は避けてあるので文学者の日記のようにありのままの生活が描かれてあるわけではない。しかし音楽雑誌ではなかなか出てこないミュージシャンが続々…
神林作品、特にこのシリーズではいつも思うけど、キャラクターと作品の距離感が絶妙。マンガのようにキャラが立っていながらあくまでクールに小説世界に配置して物語を進行させてくれる心地良さ。今作はSF的な仕掛けが少なく、宗教談義がメインでややアッサ…
ショック…。いや購入した当時はもちろん分かっていたのだが、黒田藩プレス版は途中までしか刊行してなかったんよね。完全に忘れて読んでたや。この巻まで読んだ限りでは、これまでの司政官シリーズより主人公のやってることが明らかに悪という部分があるの…
栗本薫の文章と旦那さんのエッセイ以外は読んでいてきつかった。作品の良し悪しではなく、栗本薫以外のグインを正規に刊行して欲しくないという気持ちが先立つ。作家さんも自分の世界を描きたいだろうし。残り3冊どうしようかな…。ていうかこんな商売して…
実在の作家も登場して楽しいところもあるけれど、実話怪談調という体裁が逆に物語に制限を与えている印象の方が強い。穢れの起源を追って過去へと遡る構造も、緊張感無く淡々と順を追うだけで、読んでいてノルマをこなしているだけという感覚になってしまっ…
スピリチュアルな部分には気持ち悪さも感じるものの、セラフィタ(セラフィトゥス)の俗世離れした描写は楽しいし、昇天のイメージもSFファンタジーとしてカッコよかった。
ノスタルジィと夢の回廊が延々と続くような感覚が、能動的にページをめくっていく意識と絶妙のリズムを刻んで…、などと読んでる時の味わいを文章で書こうとすると自分でも何言ってるかよくわからなくなるが、とにかく読んでいて、いい塩梅で気持ち良かった…
子供と接することで神話的時間へ行けるという冒頭の鶴見俊輔の講演は、子育てする身としは面白かったし、すごくよくわかった。ほんとにチビッコたちは全く別の世界観を生きてる。しかしそんな時間が近いうちに終わることに改めて寂しさを感じてしまう本でも…
中井英夫のエッセイか何かで名前だけは見ていた渡辺温、勧められて読んでみたら素晴らしかった。日常から一歩入り込んだ世界を描く意味での『探偵小説』の醍醐味が詰まっていて、作品ごとの完成度もやたら高い。陰鬱だけど洒落ていて物語としても面白い。読…
痺れた。ディテールの積み重ねによる重厚感、計画遂行に向かって加速する構成、魅力的な登場人物…。井筒版が見事にこの小説の空気感を再現して、切るとこ切って、映画的に盛り上げるべきところを膨らませていたこともよく分かったが、しかし北川の『なあ幸…
表題作は諸星版エルム街か。ちょっと詰め込み過ぎで、もう一篇の『悪魚の海』の爽やかな読感の方が好きだったが、ギャグとしてBLやシスコンを持ち出して最近の漫画に目配せするセンスがかわいい。
映画『アップサイド・ダウン』で使って欲しかったような小ネタ、エピソードが満載で楽しい。特にデリックメイやエイフェックスツインのエピソードはかなり幻想が壊れる感じで面白かった。米国音楽から出てた写真集もブランキーのSwedtDaysも永久保存版な自…
文章のリズムとキャラクター描写で最後までサクサク読ませつつ、「人を殺すこと」=「生きること」にも想像がいくように書かれていて、ずっぷりハマり込んで読んだ。一番楽しんだのは熊太郎弥五郎の任侠モノの部分だったけど。ただエピローグ的な部分は必要…
容赦なかった。エグい。テンション落ちない。続き読みたい…。ドラマ版は原作に沿ってやれるんだろうか?そっちも楽しみになってくるな。
好きなものの周辺で作者の名前をよく見かけたので試しに読んでみたら面白かった。愛情と悪意のこもった人物描写には笑わせられつつ、わが身を鑑みてしまう痛さもあって、収録短編ごと全く異質な登場人物それぞれが一人称でリアルに描写されているのもすごか…
虚実の境界線を扱ったり、ハードボイルド探偵SF調もあったりで、神林ワールドの集大成的な作品ながら、援交とか意外なキーワードまで登場してきて気合いが入っていた。しかも世界が虚構だから、それを打破する、ぶっ壊すという安易なところへは落とし込まず…
こういうの読むと副次的にお金使うから避けたかったけど読んでしまった。かせ栞とねこぱんち、いい。イイキョク。
好き。しかし期待値が高かったので気になる部分も多かった。物語の殆どが相棒バーナビーの野性の勘によって進行するし、台詞が説明と格好良さ重視でせっかくのキャラクター物が活きてない。物語ベースに小説を作る伊藤計劃と文章そのものが面白味になってい…
色気の無いウンチクの羅列のような小説だが、もうこの感じが独自の味になってるからいいのか…。しかしファンタジーとして作っているにしても、戦争を扱いつつ人の生き死にが全く感じられないのはどうかと思ったが。 それと、後半部分の作品にまつわる作者の…
理系なハードSFだったけど、全編に溢れるユーモアと、世界を常識とは別の視点から切り取っていくSFの醍醐味で楽しく読めた。数学的知識や思考があればもっと楽しめて別の世界が見えるんだろうけど、こればかりは今更どうしようもならんね…。
オチは冒頭で披露されているので、こちらとしてはそこへ至るまでの道程を淡々とドキュメンタリーのように眺めることになるのだけど、持てる者も持たざる者も同等に冷徹な視点で描写されているから、奇妙な怖さと格調高い読み応えが味わえた。全体から受ける…